okikamuro island fan club, 沖家室島ファンクラブ|Kamuro party かむろ会

山田重利

山田重利

  東京かむろ会名誉会長


私のかむろNo8 「母ハナの思い出」

私のかむろNo7 「農道を作るようになった訳」

私のかむろNo6 「「戦後家室での重利」

私のかむろNo5 「武田鉄工所時代」

私のかむろNo4 「爺さんの思い出」

私のかむろNo3 「石欅」

私のかむろNo2 「孤独」

私のかむろNo1 「生い立ち」

「流れ灌頂」

東京から故郷の沖家室のお墓詣り

泊清寺蝋燭立て・燭台顛末記

エッセー

私のかむろNo1 「生い立ち」

山田重利                                             投稿日2011/10/15


 幼い頃から、我が儘で自我がつよく、腕白であったその上、強情でもあった私はいったん言い出したらどんな事をしてでも通さねばすまなかった。  だから親類中では憎まれ者だった沖家室小学校の時、成績優秀で表彰された。 祖父松蔵は「柳井商業か、安下庄中学に行かないか」と言われたが、「大学まで行かして貰えるのならいいが、中学だけならやめたほうが良い」と答えた。  爺さんは「俺が生きていれば山を売っても、畑を売ってでも大学にやる事が出来るが、七十歳を越して居るから無理だ。中学だけなら行かせられると思うがなあ。」 「それなら止めた、中途半端の中学だけなら行かぬほうがよい。」「中学校でも行っておいた方が先で役にたつ事があると思うが」爺さんは何時も「生兵法は大怪我の元」と口癖だったのに。・・・・・上の学校を出てなくても「重利はやがて、中学校出も大学出も使用するようになってみせる。それなら中学も大学も出た者にも負けない」そうなって見せる。と言うと、爺さんは、「世の中はそんなに甘くないよ」とこぼした。  昭和四十五年一月二十五日、東京都大田区南蒲田一丁目六番十号に新工場を設立し更に拡張して、大学を出た人も使用するようになった。  親戚の叔父や叔母から「ぢぢ、ばば、育ては三文下がり」と言われて、爺さんがくやしそうな顔をしていた。叔父や叔母に「重利の事を、お前達は、三文さがりと言って馬鹿にしていたが。あの生き馬の目を抜くと言われる東京で、そのうえ戦争で片目をなくしても、工場を建てて立派にやっている。おれが育てたんだ」と自慢して歩き回っただろう。  昭和三十二年十月十二日。池上区民会館で三千人位入れるところの舞台の上で、東京都知事から表彰状を貰った時は、爺さん、婆さん、に見せたかった。やはり「嬉しい時は、一番に喜んでくれる人の、爺さん、婆さん、が居ない事が寂しい」  母(ハナ)の妹(クマ)の叔母で古谷源太郎(妻)や大谷の叔母や畑常吉、達の話によると、母ハナの病気が重体で意識も怪しく、わが子の重利が判るか、判ら無いかもしれないが。とにかく、重利に会わせた方が良いのではと、青木家で話が決まり。重利は祖母ハルに連れられて、母ハナの枕元にかけつけたとのこと。母はすでに眼も見えず耳も聞こえず、口もきかなくなっていたが、「重利だよ」と言ったら声も出ないのに。やっぱり、親子で判ったのだろう、重利を、しっかりと抱き締めたと云う。  古谷クマ(母ハナ)の妹や青木家の親類の話では、母ハナは自分が死んでも、骨は山田家の墓には入れないでくれと、言って居たとのこと。母ハナは、重利が生まれて九か月目に山田家を出た。亡くなった時、大正八年二月二十八日、満二十三歳五か月で重利が生まれて、満二歳三ヶ月だった。重利が満四歳十か月父甚吉も大正十年九月二十日に亡くなった。  育ての親、祖母ハルは乳飲み子の重利を抱かえて、近所の伯母さんに頭を下げて貰い乳をして、歩き回った。それでなくても馬関組の大船頭の祖父と家庭を切り回し川の端、山田、総本家として気位の高い、祖母が、乳を欲しがる重利のために、どんなにか辛い思いをしたであろうか。  育ての母である、祖母が九十一歳でなくなるまで、祖母から一言も愚痴らしい事は聞いた事はない。幸いにも近所に同級生の、来嶋定雄、丸尾助二郎、従兄弟の山田虎太郎が居て、前の家には山田常義が居た。とくに虎太郎の母には一番沢山貰ったと思う。それぞれの多くの人に助けられて此れまで生きて来られた。亡くなった方もおられるが一人一人の方にご恩返しは出来ないが、少しでも沖家室島の部落のお役にたてたらと一生懸命に心がけています。  戦場で傷つき、一時は両眼盲になり、その上、戦災で焼け出され、丸裸になりました。しかしそれにも耐えて、今日まで生きて来られたのは、祖父松蔵が日頃の教えと祖母の無言の後ろ姿にまつところが大きい。 今年で馬齢八十三歳を重ねてまいりました、これもひとえに、皆さんのお蔭と感謝の心をこめてペンを終わります。有り難うございました。 印刷 1999年7月27日14時33分

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