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藤原吉弘

藤原吉弘

前東和町町人会会長


エッセー

地図の効用

藤原吉弘   投稿日2022/2/22


ajisai
 

 NHKの大河ドラマ・鎌倉殿の13人を見ていたら、最初の舞台は伊豆の国市だったと解説されていた。伊豆半島の中央で、温泉があるというから伊豆長岡のあたりか、あるいは韮山か大仁の辺りかもしれない。いちいちインターネットで調べてみるのも面倒だ。それかといって、手持ちの古い地図にはそんな地名は載っていない。結局よく分からないままほったらかしにしてしまった。

 

 あれは、昭和の終わりのころのことだった。わが家の親子4人で、埼玉県の鴻巣市に住む家内の叔父の家へ泊まりがけで遊びに行くことになった。ところが、あいにく私はゴルフの約束をしていた。結局、私だけはゴルフ場のある茨城県の牛久市から、プレー終了後にそのお宅まで直接お伺いすることになった。

 

 ところが、関東地方の主要道は東京から外に向かって放射状に伸びてはいるが、横方向の環状道路は皆無に等しかった。地図を頼りに、ターンを繰り返しながら目的地に近づいていった。しかし、車を道の端に止めては暗い照明のもとでそれを確認するのは想像以上に大変だった。おまけに、闇夜で方角そのものが皆目見当がつかず、時折現われる標識の地名だけが頼りだった。

 

 いまなら、カーナビで事足りるが、それではアリの行進と大差のないレベルである。アリは、自分たちの生活圏がどのようになっているのか、そこで、どこからどこへなんのために移動しているのかなにもわかっていない。彼らは、ただ前について歩いているだけである。私たちは、せめて最新の地図くらいは頭の中にたたき込み、現在地と進む方向を確認しながら運転すべきではなかろうか。

 

 地図が必要なのは旅行やドライブに限ったことではない。いまや、地球人の最大の課題であるSDGsに取り組む場合もまたしかりである。全体の状況をきちんと把握し、どこにどのような課題がどの程度あるのか、それをどんなスケジュールでどのように改善していくのか。その判断基準となるのが各種データである。地図は、それらデータのうち、地理に関する部分を図形化したものである。

 

 かくして、散歩のついでに最新の、それもなるべく詳しい地図を買い求めてくることにした。新しく買った地図帳は、その店ではもっとも厚く、もっとも高額なものだった。それでも、これで国内の状況はもとより、国際情勢も的確に判断できるとあれば安い買い物である。早速、伊豆半島の市町名をその地図帳で調べてみた。伊豆市、伊豆の国市、東伊豆町、南伊豆町、そして西伊豆町と伊豆のつく市町名がなんと5つも並んでいた

 

 市町名がドラスチックに変ったのは平成の大合併によるものだが、これからもこのような大変革が起こらないとも限らない。高齢になってアンテナも錆びつきがちだが、せめて地図帳くらいは新しいものを備えておくべきだろう。

 
 

(2022年2月5日 藤原吉弘)

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